Pi Cycle Top Indicator(PCTI)

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Pi Cycle Top Indicatorとは?

Pi Cycle Top Indicator(PCTI)は、ビットコイン(BTC)の市場サイクルの天井(トップ)を予測するために設計されたテクニカル分析ツールです。ビットコインの価格が過熱し、ピークに達するタイミングを見極めることを目的としており、特に長期的な市場サイクルに注目する投資家やトレーダーに人気があります。この指標は、Philip Swiftという暗号資産アナリスト(LookIntoBitcoinの創設者)によって2019年4月に初めて公開されました。
PCTIの名前にある「Pi(π)」は、数学的な定数π(約3.14159)に由来しており、指標の計算に使用される2つの移動平均線の関係性がπに近い値を示すことにちなんでいます。この指標は、過去のビットコイン市場サイクルにおいて驚くほど正確に天井を予測してきたことで知られており、具体的には過去のピークを3日以内の精度で捉えた実績があります。

PCTIの仕組みと計算方法

PCTIは、ビットコインの日足価格データに基づく2つの移動平均線(Moving Average, MA)を比較することで機能します。具体的には以下の2つの要素を使用します:
  1. 111日単純移動平均線(111DMA)
    • 過去111日間のビットコイン価格の平均値。
    • 短期的なトレンドを反映し、価格変動に対して比較的敏感。
  2. 350日単純移動平均線に2を掛けた値(350DMA × 2)
    • 過去350日間のビットコイン価格の平均値を計算し、それを2倍したもの。
    • 長期的なトレンドを示し、価格の大きな動きを捉える基準となる。

シグナルの発生条件

PCTIは、111DMAが350DMA × 2を上抜けするタイミングを「市場の天井シグナル」と定義します。このクロスオーバーが発生すると、ビットコインの価格が過熱状態に達し、間もなく下落する可能性が高いと解釈されます。
「Pi」の由来
350を111で割ると、約3.153となり、これは数学的なπ(3.14159)に非常に近い値です。この近似性が指標の名前の由来であり、ビットコインの価格サイクルが自然界や数学的なパターンに類似した周期性を持つ可能性を示唆しています。ただし、この「Pi」の要素はあくまで命名の遊び心であり、指標の予測精度に直接的な科学的根拠を与えるものではありません。

過去の実績

PCTIは、ビットコインの過去の主要な市場サイクルで以下のタイミングで天井を正確に予測しました:
  • 2013年4月5日: シグナル発生後、数日で65.5%下落(市場規模が小さかった時期のため、信頼性はやや低いとされる)。
  • 2013年12月3日: ピークの1日前、86.11%の下落を予測。
  • 2017年12月16日: ピークの1日前、84.3%の下落を予測。
  • 2021年4月13日: シグナル後、ビットコインはさらに上昇したが、その後50%以上下落。
これらの事例では、PCTIが天井を3日以内の精度で捉えたことが多く、特に2013年以降の主要なブルマーケットの終了を示す信頼性の高い指標として注目されています。ただし、2021年11月の史上最高値(約69,000ドル)ではシグナルが発生せず、すべてのピークを捉えられるわけではないことも明らかです。

PCTIの解釈と投資戦略

PCTIは、市場が「過熱状態」に達したことを示す警告信号として機能します。以下は一般的な解釈と活用法です:
  • 111DMAが350DMA × 2を上抜けた場合
    • 市場が過剰に上昇し、バブル的な状況にある可能性が高い。
    • 売り時(利益確定)やリスク管理を検討するタイミング。
  • 111DMAが350DMA × 2に近づいているが未クロスの場合
    • ブルマーケットがまだ継続中である可能性があり、さらなる上昇余地がある。
    • ただし、接近度合いによっては警戒が必要。
  • 111DMAが350DMA × 2から大きく下にある場合
    • 市場は過熱しておらず、強気相場の初期〜中期段階にある可能性。

具体的な活用例

  • リスク管理: シグナル発生時にポジションを減らすか、ヘッジ戦略を検討。
  • タイミング調整: シグナルが近づくまでは買い増しを控え、クロス後に市場の反転を待つ。
  • 他の指標との併用: PCTI単体では不完全なため、RSIやMVRV Zスコア、Stock-to-Flowモデルなどと組み合わせて判断を強化。

PCTIの強みと限界

強み

  1. 高い過去の精度: 過去の主要サイクルで天井を3日以内に予測した実績。
  2. シンプルさ: 2つの移動平均線のみを使用するため、理解しやすく、誰でも追跡可能。
  3. 長期視点: 短期ノイズを排除し、大きな市場サイクルに焦点を当てた設計。

限界

  1. 後付けの側面: PCTIは2019年に開発されたため、それ以前のデータ(2013年や2017年)は「過去に合わせて調整された」可能性がある(カーブフィッティングのリスク)。
  2. すべての天井を捉えられない: 2021年11月のピークなど、シグナルが発生しないケースも存在。
  3. 市場環境の変化: ビットコインETFの導入や機関投資家の参入など、市場構造が変化する中で、過去のパターンが今後も有効とは限らない。
  4. 売り圧力の自己実現: PCTIが広く知られているため、シグナル発生時に多くのトレーダーが売却し、価格下落が加速する「自己実現的予言」の可能性。

2025年3月12日時点での状況

現在の具体的なPCTIの値を知るには、リアルタイムのビットコイン価格データと移動平均線の計算が必要です(例えば、TradingViewやCoinGlassで確認可能)。一般的な傾向として:
  • 2025年3月時点でビットコインが強気相場にある場合、111DMAが350DMA × 2に近づいているかどうかをチェックすることで、過熱度を判断できます。
  • もしすでにクロスが発生していれば、市場が天井に達した可能性を検討する時期です。

まとめ

Pi Cycle Top Indicator(PCTI)は、ビットコインの市場サイクル天井を予測するシンプルかつ効果的なツールです。
111DMAと350DMA × 2のクロスオーバーを利用し、過去のブルマーケット終了を高精度で示してきた実績があります。
ただし、後付けのリスクや市場変化への適応性に課題があり、単独での使用よりも他の指標と組み合わせることで信頼性が向上します。長期投資家やリスク管理を重視するトレーダーにとって、PCTIは市場の過熱を把握するための貴重な手がかりとなるでしょう。