NVT比(Network Value to Transaction Ratio、ネットワーク価値対取引比率)

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出典 : https://newhedge.io/bitcoin/network-value-to-transaction-ratio

NVT比(Network Value to Transaction Ratio、ネットワーク価値対取引比率)は、暗号通貨の評価に用いられる指標の一つで、特定の暗号通貨の市場価値(時価総額)とそのネットワーク上で処理される取引量の関係を示します。
この指標は、株式市場におけるPER(株価収益率)に似たものとして、暗号資産の「過大評価」や「過小評価」を判断する際に役立つとされています。以下に詳しく説明します。

1. NVT比の定義

NVT比は、次の式で計算されます:
  • ネットワーク価値(Network Value): 暗号通貨の現在の時価総額。具体的には、流通しているコインの総数に現在の市場価格を掛けたもの。
  • 取引量(Transaction Volume): ブロックチェーン上で記録された1日あたりの取引金額。通常、米ドル(USD)に換算して計算されます。
例えば、ビットコイン(BTC)の時価総額が1兆ドルで、1日の取引量が10億ドルだとすると、NVT比は以下のように計算されます:

2. NVT比の意味

NVT比は、暗号通貨のネットワークがどれだけ「利用されているか」をその価値と比較して示します。
  • 高いNVT比: 時価総額に対して取引量が少ないことを意味し、ネットワークが過大評価されている可能性があると解釈されます。つまり、投機的なバブルが発生しているかもしれない状況です。
  • 低いNVT比: 時価総額に対して取引量が多いことを示し、ネットワークが過小評価されているか、あるいは実際の経済活動(利用)が活発である可能性があります。

3. NVT比の活用例

  • 市場分析: ビットコインやイーサリアムなどの主要な暗号通貨でNVT比を追跡することで、価格がファンダメンタルズ(実際の利用状況)に比べて高すぎるか安すぎるかを推測できます。
  • トレンドの特定: 歴史的に、NVT比が急上昇した後に価格が下落する傾向が観察されており、バブル崩壊の兆候として使われることがあります。逆に、NVT比が低い時期は買い時とされることもあります。

4. 限界と注意点

NVT比は有用な指標ですが、いくつかの限界もあります:
  • 取引量の正確性: オンチェーン取引量は、実際の経済活動を完全に反映しない場合があります。例えば、ウォッシュトレード(見せかけの取引)やミキサー(匿名化サービス)によるノイズが含まれる可能性があります。
  • 暗号通貨ごとの特性: ビットコインのような「価値の保存(Store of Value)」を目的とする資産と、イーサリアムのような「スマートコントラクト基盤」では、取引量の意味合いが異なるため、単純比較が難しい場合があります。
  • 外部要因: 市場心理、マクロ経済状況、規制の変化などはNVT比に直接反映されないため、総合的な分析が必要です。

5. 具体例(ビットコインの場合)

ビットコインのNVT比は、2017年のバブル期に非常に高くなり、その後2018年の下落を予見するシグナルとして一部のアナリストに注目されました。一方で、2020-2021年の上昇相場では、取引量の増加が時価総額の成長をある程度支えたため、NVT比は比較的安定していました。

結論

NVT比は、暗号通貨の価格がネットワークの実際の利用状況とどの程度整合しているかを測るツールとして有効です。
ただし、他の指標(例えば、ハッシュレート、アクティブアドレス数、市場センチメント)と組み合わせることで、より正確な分析が可能になります。