HODLウェーブ (HODL Waves)

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出典 : https://www.bitcoinmagazinepro.com/charts/1-year-hodl-wave/

HODLウェーブ(HODL Waves)とは、主にビットコイン(Bitcoin)の長期保有傾向や市場の動向を分析するためのビジュアルツールであり、暗号資産コミュニティで広く使われている概念です。
これは、ビットコインのトランザクション履歴(具体的にはUTXO: Unspent Transaction Output、未使用トランザクション出力)を基に、どれだけのビットコインが一定期間「動かされていないか(HODLされているか)」を時間帯別に示したものです。「HODL」という言葉は、ビットコインコミュニティで「Hold On for Dear Life(死守する)」の略語として使われ、価格が変動しても売らずに持ち続ける投資戦略を指します。
以下に、HODLウェーブの詳細な説明とその仕組みを解説します。

HODLウェーブの基本構造

HODLウェーブは通常、チャート形式で表示されます。このチャートでは、横軸が時間(現在までの経過時間)、縦軸がビットコインの総供給量に対する割合を示し、色や帯で「どのくらいの期間保有されているか」を表します。具体的には、ビットコインが最後に移動した時期に応じて分類され、例えば以下のような時間帯に分けられます:
  • 1日未満
  • 1日〜1週間
  • 1週間〜1ヶ月
  • 1ヶ月〜3ヶ月
  • 3ヶ月〜6ヶ月
  • 6ヶ月〜1年
  • 1年〜2年
  • 2年〜3年
  • 3年〜5年
  • 5年以上
各時間帯は異なる色で表され、これにより「どのくらいのビットコインがどれだけの期間動かされていないか」が一目で分かります。

HODLウェーブの分析ポイント

  1. 長期保有者の動向
    • 5年以上動かされていないビットコインの割合が多い場合、強固な「HODL精神」を持つ投資家が多いことを示します。これは市場が長期的な信頼を持っている証拠とされることがあります。
    • 逆に、短期(1日〜1ヶ月)の帯が急激に増える場合、投機的な動きや売買が活発化している可能性があります。
  2. 市場サイクルの把握
    • ビットコインの価格が急上昇する「強気相場(Bull Market)」では、長期保有していたビットコインが動き始め、短期の帯が厚くなる傾向があります。これは利益確定の売りが出ていることを示します。
    • 一方、「弱気相場(Bear Market)」では、短期の帯が減少し、長期保有の帯が増える傾向があります。これは投資家が売却を控え、価格回復を待つ姿勢を取っていることを意味します。
  3. 失われたコインの推定
    • 5年や10年以上動いていないビットコインは、紛失したウォレットや忘れられた資産である可能性が高く、市場の流通量から事実上除外されているとみなされることがあります。

HODLウェーブの具体例

例えば、2021年のビットコイン強気相場のピーク時には、1年以上の長期保有帯が減少し、短期帯(1ヶ月未満)が急増しました。これは、多くの長期保有者が高値で売却したことを示していました。対照的に、2022年の弱気相場では、1年以上保有するビットコインの割合が再び増加し、投資家が下落局面で売るのを避けている様子が観察されました。

データの取得元

HODLウェーブは、ビットコインのブロックチェーンから取得できる公開データ(UTXOセット)を基に作成されます。このデータは、GlassnodeやCoinMetricsなどの暗号資産分析プラットフォームで可視化されており、誰でもアクセス可能です。

HODLウェーブの意義

HODLウェーブは、単なる価格チャートとは異なり、ビットコイン保有者の行動パターンや心理を映し出すツールとして機能します。これにより、以下のような洞察が得られます:
  • 市場の成熟度: 長期保有者が多いほど、市場が安定している可能性がある。
  • 投機的活動の検出: 短期保有の急増は、過熱した市場やバブルの兆候を示すことがある。
  • マクロトレンドの確認: 長期的な保有傾向から、ビットコインが資産としてどのように認識されているかを推測できる。

まとめ

HODLウェーブは、ビットコインの保有期間を視覚化したもので、投資家の行動や市場サイクルを理解するのに役立つ強力な分析ツールです。
長期保有者の割合が多いときは市場の信頼感が強く、短期保有者が増えるときは売買が活発化しているサインと考えられます。