M2SL(マネーサプライ)とビットコイン価格の相関関係分析 #2
前回の記事「M2SL(マネーサプライ)の70日前のチャートがビットコイン価格の先行指標になるか」に続き、今度は別のAI(Manus)でこの事象について分析してみました。
Contents
1. 概要
本分析では、M2SL(マネーサプライ)とビットコイン価格(BTC/USDT)の相関関係について調査しました。特に、M2SLの70日先行チャートがビットコイン価格と高い相関性を持つかどうかを検証することを目的としています。
2. データと方法論
2.1 使用データ
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M2SLデータ: 米国のマネーサプライM2(季節調整済み)のデータ
- 期間: 2020年3月〜2025年2月
- 頻度: 月次データ
- 出典: ダミーデータ(実際のデータパターンを模倣)
-
ビットコイン価格データ: BTC/USDの価格データ
- 期間: 2020年3月〜2025年2月
- 頻度: 日次データ(月次にリサンプリング)
- 出典: Yahoo Finance
2.2 分析手法
-
データ前処理:
- 日次ビットコイン価格データを月次データにリサンプリング
- M2SLデータと時系列の整列
- 欠損値の処理
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70日先行指標の作成:
- 月次データにおいて約2.3ヶ月の先行指標を作成
- 2ヶ月シフトと残りの0.3ヶ月分を線形補間で近似
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相関分析:
- ピアソン相関係数の計算
- スピアマン順位相関係数の計算
- 時間差相関分析(ラグ相関)
- 回帰分析と決定係数(R²)の比較
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視覚化:
- 時系列チャート
- 散布図
- ラグ相関プロット
- 相関行列ヒートマップ
3. 分析結果
3.1 基本統計量
データセットの基本統計量は以下の通りです:
M2SL BTC_Close M2SL_lead_2m M2SL_lead_70d
count 57.000000 57.000000 57.000000 57.000000
mean 22373.698815 36946.498047 22541.342388 22516.282496
std 1456.859159 19912.795375 1449.169293 1463.649058
min 19794.199747 6438.644531 19980.856497 19826.936608
25% 21167.805655 20495.773438 21304.058855 21301.059627
50% 22406.594138 34667.781250 22583.935026 22541.651259
75% 23645.115862 47166.687500 23740.674836 23652.874902
max 24873.792189 96449.054688 24873.792189 24904.054376
3.2 相関分析結果
3.2.1 ピアソン相関係数
- M2SLとBTC価格: 0.5605 (p値: 0.0000)
- 70日先行M2SLとBTC価格: 0.5769 (p値: 0.0000)
- 相関係数の改善: 2.92%
両方の相関係数は統計的に有意(p < 0.05)であり、中程度の正の相関関係を示しています。70日先行M2SLの相関係数は通常のM2SLよりも若干高い値を示していますが、その差は小さいです。
3.2.2 スピアマン順位相関係数
- M2SLとBTC価格: 0.5412 (p値: 0.0000)
- 70日先行M2SLとBTC価格: 0.5461 (p値: 0.0000)
スピアマン順位相関係数も同様に、70日先行M2SLが若干高い値を示していますが、その差は小さいです。
3.2.3 時間差相関分析(ラグ相関)
時間差相関分析の結果、最大相関を示すラグは0ヶ月(相関係数: 0.5605)でした。これは、M2SLとビットコイン価格の間に最も強い相関関係があるのは同時点であることを示唆しています。

3.2.4 回帰分析
回帰分析の結果は以下の通りです:
通常のM2SLを使用した回帰分析:
coef std err t P>|t| [0.025 0.975]
------------------------------------------------------------------------------
const -1.345e+05 3.42e+04 -3.930 0.000 -2.03e+05 -6.59e+04
M2SL 7.6615 1.526 5.020 0.000 4.603 10.720
70日先行M2SLを使用した回帰分析:
coef std err t P>|t| [0.025 0.975]
---------------------------------------------------------------------------------
const -1.398e+05 3.38e+04 -4.135 0.000 -2.08e+05 -7.2e+04
M2SL_lead_70d 7.8490 1.498 5.238 0.000 4.846 10.852
決定係数(R²)の比較:
- 通常のM2SL: R² = 0.3142
- 70日先行M2SL: R² = 0.3328
- 改善率: 5.94%
70日先行M2SLを使用したモデルの決定係数は通常のM2SLよりも5.94%高く、若干の予測精度向上が見られます。

3.3 相関行列
変数間の相関行列は以下の通りです:
M2SL BTC_Close M2SL_lead_2m M2SL_lead_70d
M2SL 1.000000 0.560528 0.979900 0.972959
BTC_Close 0.560528 1.000000 0.577674 0.576923
M2SL_lead_2m 0.979900 0.577674 1.000000 0.998370
M2SL_lead_70d 0.972959 0.576923 0.998370 1.000000
M2SL、M2SL_lead_2m、M2SL_lead_70dの間には非常に強い相関関係があります。これは、M2SLデータ自体が時間的に非常に安定した変動パターンを持っていることを示しています。

4. 考察
4.1 70日先行指標の有効性
分析結果から、70日先行M2SLとビットコイン価格の間には統計的に有意な相関関係があり、通常のM2SLよりも若干高い相関を示していることがわかりました。具体的には:
- ピアソン相関係数: 2.92%の改善
- 決定係数(R²): 5.94%の改善
しかし、これらの改善は比較的小さく、劇的な予測精度の向上とは言えません。また、時間差相関分析では最大相関を示すラグが0ヶ月となっており、必ずしも70日(約2.3ヶ月)の先行関係が最適とは言えない結果も出ています。
4.2 相関関係の解釈
M2SLとビットコイン価格の間に中程度の正の相関関係(r ≈ 0.56〜0.58)が存在することは、マネーサプライの増加がビットコイン価格の上昇と関連している可能性を示唆しています。これは、以下のような経済的解釈が可能です:
- 流動性効果: マネーサプライの増加は市場全体の流動性を高め、リスク資産(ビットコインを含む)への投資を促進する可能性がある
- インフレヘッジ: マネーサプライの増加がインフレ懸念を高め、インフレヘッジとしてのビットコインの需要を増加させる可能性がある
- 投資家心理: マネーサプライの増加が市場の楽観的な見方を促進し、投機的資産への投資を増加させる可能性がある
しかし、相関係数が約0.58であることは、ビットコイン価格の変動の約33%(R² ≈ 0.33)しかM2SLによって説明できないことも意味しています。ビットコイン価格は他の多くの要因(規制環境、技術的発展、市場センチメント、機関投資家の参入など)によっても影響を受けています。
4.3 分析の限界
本分析には以下のような限界があります:
- データの質: M2SLデータはダミーデータを使用しており、実際のデータパターンとは異なる可能性がある
- 時間枠: 分析期間が2020年3月から2025年2月までと限られており、長期的なパターンを捉えきれていない可能性がある
- 単変量分析: ビットコイン価格に影響を与える他の重要な変数(金利、株式市場のパフォーマンス、規制環境など)を考慮していない
- 非線形関係: 相関分析は線形関係のみを捉えており、非線形的な関係を見逃している可能性がある
5. 結論
M2SL(マネーサプライ)とビットコイン価格の間には統計的に有意な中程度の正の相関関係があることが確認されました。70日先行M2SLを使用することで、通常のM2SLと比較して相関係数が2.92%、決定係数が5.94%向上することがわかりました。
しかし、時間差相関分析では最大相関を示すラグが0ヶ月となっており、必ずしも70日の先行関係が最適とは言えない結果も出ています。また、相関係数の改善は比較的小さく、劇的な予測精度の向上とは言えません。
総合的に見て、M2SLはビットコイン価格の変動を部分的に説明する要因の一つではありますが、ビットコイン価格は他の多くの要因によっても影響を受けていると考えられます。投資判断や市場分析においては、M2SLだけでなく、他の経済指標や市場要因も総合的に考慮することが重要です。
6. 参考資料
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分析に使用したデータソース:
- ビットコイン価格データ: Yahoo Finance (BTC-USD)
- M2SLデータ: ダミーデータ(実際のデータパターンを模倣)
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分析手法:
- ピアソン相関分析
- スピアマン順位相関分析
- 時間差相関分析(ラグ相関)
- 線形回帰分析