M2SLの先行チャートとBTC価格の相関性 #2

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前回の記事「M2SL(マネーサプライ)の70日前のチャートがビットコイン価格の先行指標になるか」で、M2SLの70日先行チャートとBTC価格の相関性について分析しましたが、さらに、M2SLを約61日(2ヶ月)先行させたデータとBTC/USDTの相関関係について詳細な分析を行いました。
結果は非常に興味深く、時期によって相関性が大きく変化していることがわかりました。

 

相関係数:

全期間: 0.7441

2020年以降: 0.6167

2023年以降: 0.8939

全体的な相関関係

  • 全期間相関係数: 0.7441
    • 61日先行のM2SLとBTC価格の間には強い正の相関があります
    • 相関係数0.74は金融データとしては非常に高い値で、明確な関連性を示しています

時期別の相関関係

  • 2020年以前: 0.2488(弱い相関)
  • 2020年〜2022年: 0.6167(中程度の相関)
  • 2023年以降: 0.8939(非常に強い相関)

最も注目すべき点は、相関関係が時間の経過とともに強まっていることです。特に2023年以降は0.89という非常に高い相関を示しており、M2SLが近年のビットコイン価格の動きをより強く説明するようになっています。

市場イベント時の相関関係

  • コロナショック前: 0.6188
  • コロナショック後: 0.8339 (相関が強まった)
  • 2021年4-6月の暴落時: -0.9999(ほぼ完全な負の相関)
  • FTX破綻前: 0.7539
  • FTX破綻後: -0.5841(負の相関に転換)

特に興味深いのは、主要な市場イベント時に相関関係が大きく変化することです。コロナショック後に相関が強まった一方、2021年の暴落時やFTX破綻後には負の相関に転じました。これは市場の極端なストレス状況では、通常の相関関係が一時的に崩れる可能性を示しています。

成長率と変動分析

  • M2SL成長率とBTC成長率の相関: 0.1723(弱い相関)
  • 長期トレンド(12ヶ月移動平均)の相関: 0.8048(強い相関)
  • 短期変動の相関: 0.2422(弱い相関)

これは非常に重要な発見です。M2SLとビットコインの相関は主に長期的なトレンドに現れ、短期的な変動では相関が弱くなります。つまり、M2SLは日々や月々の価格変動よりも、数ヶ月から数年単位の長期的な価格方向性を予測するのに役立つ指標と言えます。

市場フェーズ別の相関

  • BTC上昇局面: 0.7800
  • BTC下降局面: 0.7786

興味深いことに、ビットコインの上昇局面と下降局面でほぼ同等の相関係数を示しています。これはM2SLが特定の市場方向性に偏らず、全般的にビットコイン価格と連動していることを示唆します。

M2SLの急増・減少時のビットコイン価格反応

  • M2SL急増後3ヶ月間のBTC平均変化率: +14.93%
  • M2SL減少後3ヶ月間のBTC平均変化率: +12.35%

M2SLが急増(月間2%以上増加)した後の3ヶ月間では、ビットコイン価格が平均で約15%上昇しました。一方で興味深いことに、M2SLが減少した後も、ビットコイン価格は平均で約12%上昇しています。これは、M2SLの増減がそのまま直線的にビットコイン価格に反映されるわけではなく、他の要因も大きく影響していることを示しています。

最近のデータ分析

2024年から2025年初頭の最新データでは、M2SLとビットコイン価格の正規化値がほぼ完全に連動しています。最新12か月のデータを見ると、両者の動きがほぼ同じパターンを示しており、相関が特に強いことが視覚的にもわかります。

結論と実用的な示唆

  1. M2SLは有効な先行指標: 61日(2ヶ月)先行させたM2SLはビットコイン価格の有効な予測指標となり得ます。特に長期トレンドにおいて強い相関があります。
  2. 相関関係の経時的強化: 相関関係は年々強まっており、特に2023年以降は非常に強い相関(0.89)を示しています。これはマクロ経済環境とビットコイン市場の結びつきが強くなっていることを示唆しています。
  3. 長期投資判断に有用: M2SLは日々の価格変動よりも、数ヶ月から数年単位の長期的な価格方向性を予測するのに役立ちます。短期取引よりも長期投資判断の参考指標として活用すべきです。
  4. 市場ストレス時の相関変化に注意: 市場が極端なストレス状況(暴落や主要イベント)では、通常の相関関係が一時的に崩れる可能性があります。このような時期は追加的な分析が必要です。
  5. 単独指標としての限界: M2SLだけでビットコイン価格を完全に説明することはできません。特に短期的な価格変動や市場イベント時は、他の要因も併せて考慮する必要があります。

M2SLを約61日先行させたデータはビットコイン価格の中長期的な方向性を予測する上で非常に有用な指標であり、特に近年その有効性が高まっていることが今回の分析から明らかになりました。