ビットコイン未実現純利益(Net Unrealized Profit and Loss、NUPL)

ビットコインの未実現純利益(Net Unrealized Profit and Loss、NUPL)は、ビットコイン市場の投資家の収益性や市場心理を評価するためのオンチェーン指標の一つです。
この指標は、ビットコイン保有者が現在保有しているコインの価値が取得時の価格と比べてどれだけ利益または損失を生んでいるかを示します。
この指標は、ビットコイン保有者が現在保有しているコインの価値が取得時の価格と比べてどれだけ利益または損失を生んでいるかを示します。
1. NUPLの定義
NUPLは、ビットコインの**時価総額(Market Cap)と実現済み時価総額(Realized Cap)**の差を基に計算されます。具体的には以下の式で表されます:
NUPL = (Market Cap - Realized Cap) / Market Cap
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時価総額(Market Cap): 現在のビットコインの価格に総供給量を掛けたもの。
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実現済み時価総額(Realized Cap): 各ビットコインが最後に取引された価格(実現価格)を基に計算された総額。市場価格の変動を無視し、実際に移動したコインの価値を反映します。
この結果、NUPLは0から1の範囲、あるいは負の値を取ることがあり、市場全体の未実現利益または損失の割合を示します。
2. NUPLの解釈
NUPLの値によって、市場の状況や投資家の心理を以下のように分類できます:
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NUPL > 0.5(高い正の値): 市場が過熱しており、多くの投資家が大きな未実現利益を持っている状態。歴史的には、このゾーンで市場がピークを迎え、売り圧力が高まる傾向があります(「楽観」や「強欲」のフェーズ)。
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NUPL = 0.25〜0.5: 適度な利益が出ている状態で、市場が上昇トレンドにあることを示します(「希望」や「信念」のフェーズ)。
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NUPL ≈ 0: 市場が中立で、利益と損失が均衡している状態。多くの場合、底値圏や回復初期に見られます。
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NUPL < 0(負の値): 未実現損失が優勢で、市場が下落トレンドにあることを示します。投資家の「絶望」や「投げ売り」が発生しやすいゾーンです。
3. NUPLの活用例
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市場サイクルの分析: NUPLはビットコインの強気相場や弱気相場の転換点を予測するのに役立ちます。例えば、NUPLが0.75を超えると「バブル」の兆候とされ、過去のデータでは2017年や2021年のピークでこの水準に達しています。
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投資家の行動: 未実現利益が大きくなると、投資家は利益確定のために売却する可能性が高まり、逆に未実現損失が大きくなるとパニック売りが発生しやすくなります。
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長期トレンドの確認: NUPLが負の領域から正に転じるタイミングは、市場の底打ちと回復の兆しを示すことがあります。
4. 注意点
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短期的なノイズ: NUPLはオンチェーンデータに基づくため、短期的な価格変動による一時的な歪みが生じることがあります。
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外部要因: マクロ経済や規制の影響はNUPLに直接反映されないため、他の指標(例: RSIやFunding Rate)と併用することが推奨されます。
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UTXOベース: ビットコインの未使用トランザクション出力(UTXO)を基に計算されるため、取引所の大口保有や非アクティブなウォレットの影響を受けることがあります。
まとめ
NUPLは、ビットコイン市場の「感情」と「収益性」を可視化する強力なツールです。投資家がどれだけ利益を握っているか、あるいは損失を抱えているかを把握することで、市場の過熱や底値を見極める手助けになります。この指標を他のテクニカル分析やファンダメンタルズと組み合わせることで、より精度の高い判断が可能になります。