プル倍数 (Puell Multiple)
ビットコインのプル倍数 (Puell Multiple) は、ビットコインのマイニング収益と市場価格の関係を分析するための指標で、特にマイナーの経済的健全性や市場の過熱・過冷を評価するのに役立ちます。以下で詳しく説明します。
1. プル倍数の定義
プル倍数は、次の式で計算されます：
Puell Multiple=ビットコインの1日のマイニング収益 (USD)その収益の365日移動平均 (USD)\text{Puell Multiple} = \frac{\text{ビットコインの1日のマイニング収益 (USD)}}{\text{その収益の365日移動平均 (USD)}}
\text{Puell Multiple} = \frac{\text{ビットコインの1日のマイニング収益 (USD)}}{\text{その収益の365日移動平均 (USD)}}-
分子: ある特定の日におけるマイナーによるビットコインの新規発行収益（その日のビットコイン価格 × マイニングされたビットコインの量）。
-
分母: 過去365日間の1日あたりマイニング収益の平均値。
この指標は、現在のマイニング収益が長期平均と比べてどの程度高いか低いかを示します。
2. プル倍数の意味
プル倍数は、マイナーの収益性がビットコイン市場の価格動向にどう影響するかを測るツールとして使われます。
-
高いプル倍数（例: 3以上）: マイニング収益が長期平均に比べて非常に高いことを示します。これは通常、ビットコイン価格が急上昇している時期（バブル相場）に発生し、マイナーが大量に売却する可能性が高まるため、市場の天井を示唆することがあります。
-
低いプル倍数（例: 0.5以下）: マイニング収益が長期平均よりも大幅に低いことを示します。これはビットコイン価格が低迷している時期（弱気相場）に起こりやすく、マイナーの収益性が低下して一部が撤退する可能性があるため、市場の底を示唆することがあります。
3. 歴史的背景と活用例
プル倍数は、暗号資産アナリストのDavid Puellによって考案されました。過去のデータを見ると、ビットコインの大きな価格変動とプル倍数の動きには相関が見られます：
-
2017年のバブル: プル倍数が急上昇し、4～5に達した後、価格が急落。
-
2021年の強気相場: プル倍数が3を超えた時期がピークと一致。
-
2018年や2022年の弱気相場: プル倍数が0.5を下回り、底値圏で安定。
4. 現在の状況（2025年3月12日時点）
2025年3月時点で、ビットコインの価格動向やハッシュレート、半減期後の影響（2024年4月の半減期）を考慮すると：
-
価格が上昇トレンドにある場合、プル倍数は1を超えている可能性があります。
-
逆に、価格が停滞または下落している場合、マイナーの収益性が圧迫され、プル倍数が1未満になっているかもしれません。
具体的な数値を知りたい場合は、GlassnodeやLookIntoBitcoinなどの分析プラットフォームで最新のプル倍数を確認することをお勧めします。
5. プル倍数の限界
-
外部要因の影響: プル倍数はマイニング収益に依存するため、エネルギーコストや規制、ハッシュレートの変動などの外部要因が結果を歪めることがあります。
-
単独では不十分: 他の指標（例: MVRV比、ストック・トゥ・フローなど）と組み合わせることで、より正確な市場分析が可能です。
まとめ
プル倍数は、ビットコイン市場のサイクルを理解する上で強力なツールであり、マイナーの行動や市場の過熱・過冷を把握するのに役立ちます。投資やトレードの参考にする場合、歴史的データや他の指標と照らし合わせて使うと、より深い洞察が得られるでしょう。